読影総論


読影を習得するには

  第1に 良いX線写真を撮る(技術的な経験を積む)。

  第2に 肉眼所見が忠実に描写されている良いX線写真をた        
      くさん見る(視覚的な知識を蓄積する)。

  第3に 自分なりに尊敬する師との出会いが大切である(物      
      の見方,考え方および姿勢を学ぶ)。

この3項目を満たすには,まず「胃」に興味を持つことが大切です。


Ⅰ.基本的事項

1.胃の変形、形の異常
  小弯短縮、B型変形胃、砂時計胃、胃壁伸展の悪いスキルス
  胃壁伸展の良いスキルス
2.胃辺縁の異常
  ニッシェ、伸展不良像、壁硬化像(直線化も含む)、壁不整像、
  陰影欠損、弯入、タッシェ(たるみ)
3.胃内腔面の異常
  1)粗な異常
     ニッシェ、陰影欠損(透亮像)、粘膜ひだの異常
  2)微細な異常
    胃小区の異常,
    凸所見(顆粒像、再生性の変化、増殖性の変化)
    凹所見(局所的な萎縮粘膜、びらん性変化)

Ⅱ.基本的な読影手順


1.読影するX線写真の
   1)空気量(空気少量、空気中等量、空気過伸展気味)
   2)撮影体位および撮影法
2.病変の部位
3.病変の形 ・・類円形、類楕円形、不規則な形、不整な形など
4.病変形態の表現・・バリウム陰影、バリウム斑(淡い、濃い)
              陰影斑、透亮像(明瞭、不明瞭)など
              粘膜ひだ集中、粘膜集中の有無
5.病変の性状
   1)ニッシェ、陰影欠損(透亮像)
   2)ニッシェかどうか読影できない場合は陥凹と表現
   3)隆起性病変の場合、隆起の性状
   4)胃小区像の変化では、その変化所見を面(領域)と表現

早期胃癌発見のための胃X線撮影・読影について

 
 胃癌病変描出を空気量の多寡,造影剤の付着および撮影,読影との関係について思考してみます。空気量の多寡は早期癌を極早期癌と典型早期癌とに大別して,比較検討します。極早期癌は一部の局在部位を除けば空気少量から空気中等量の二重造影像が癌病変描出に適しています。典型早期癌は空気中等量から空気過伸展気味でも描出できます。すなわち,早期癌描出には空気量の多寡が大きく影響します。どの程度の空気量が病変描出に適しているか,一般的なことは言えても厳密には言い表せません。表現できないからこそ,空気量を変化させて撮影する必要が生じてきます。

 次に,造影剤の付着について述べますと,胃X線写真は綺麗なX線写真と質の良いX線写真とに大別できます。綺麗なX線写真で極早期癌の発見は困難なことが多いと思います。すなわち,綺麗なX線写真と質の良いX線写真は基本的には乖離がみられます。綺麗なX線写真を胃小区像に例えて表現しますと,胃小区の1つ1つが一見,明瞭に表れ大部分が識別可能です。但し,厳密には胃小区像は大きさ,,配列などが比較的にみられる場合と,微細な胃小区間溝が表れる場合とは必ずしも一致しません。ル-チン検査では胃小区像の大きさ,,配列などを描出することは比較的に可能ですが,微細な胃小区間溝の肉眼像と一致させて描出することは比較的に難しいと思います。詳細に述べますと,胃小区の変化所見は二次元的な手法で一部を表すことが可能です。その手法に加え,胃小区の表面に薄く(淡く)造影剤を流しますと,胃小区の大きさ,,配列などの変化以外に凹凸所見がみられるようになります。これらの変化は三次元的(立体的変化)手法と表現でき,二次元的,三次元的手法の組み合わせにより良好な病変描出が得られること,それを質の良いX線写真とよんでいます。要は,二次元的(平面的)および三次元的(立体的)な手法により病変描出の十分なX線写真を質の良いX線写真と表現できることになります。

 撮影と読影は“の嘴”の如く言われますが,その原因を思考しますとやや曖昧模糊と言わざるを得ません。その原因の1つは,最初に撮影の指導を受け,後に読影を学ぶため,読影が難しく撮影が容易であるかの如く間違いに陥っていると考えられます。読影は撮影で描出された変化所見以外を読むことはできません。すなわち,いくら読影が優れていても,撮影で描出されていなければ例え典型早期癌でも発見することが難しいと思われます。逆も真であり,いくら典型早期癌が描出されていても,読影ができなければ次の検査に進むことができません。突き詰めれば見逃し例という良くない結果が生じます。同様なことですが,極早期癌がX線写真上に描出されているにもかかわらず,読影が未熟なため発見ができないこともあります。要は,撮影が秀でているにもかかわらず,読影が未熟であったり,逆に読影が秀でているにもかかわらず,撮影が未熟であることは,どちらとも未熟であると言わざるを得ません。撮影と読影は表裏一体の関係であり,撮影は読影に,読影は撮影に包括されていると言っても過言ではありません。それらのことを解決するには,技術的な経験を積む,視覚的な知識を蓄積する,物の見方,考え方および姿勢を学ぶことが必要となります。また,ある程度の修羅場は避けてとおれないことも事実です。 

 以上のことは,浅学菲才および微々たる経験から得た論究をもとに,自戒のために記載したものです。早期胃癌を発見するためにはこれらのことを考えながら自ら習練する以外,近道はありません。


胃X線撮影撮影・読影の向上するためには


 近年,胃X線撮影・読影は暗く長いトンネルを抜け,少し前進したようにも思える。その原因を考えてみれば,X線写真とマクロとの対比ではなく,X線写真とミクロとの一対一の対比が行われているからである。

 この方法が正論であることは言うまでもないが,それができるようになるには少々時間がかかることはやむを得ない。
 また,この方法を行うためには幾つかのハードルを越えなければならない。
 胃X線読影が向上するためには,大別すれば2つの方法が考えられる。1つはX線的に異常陰影を指摘し,精密検査で癌と読影する方法,もう1つは,X線的に癌を疑ったが結果的に良性であった症例(偽陽性例)を集積し,誤った読影を追求する方法である。
 どちらにしても質の良いX線写真を求めることが原点であり,成立する読影方法である。観点を変えれば,癌病変を読影しようとすれば非癌病変との鑑別が必要であり,非癌病変を読影するには癌病変との比較検討が必須である。
 すなわち,どちらの方法も求めている手法に違いがあっても,真に求めているものは同質のものであり,読影・撮影への追求および精進である。
 通常,行われているのは前者(異常陰影を指摘し精密検査で癌と読影)である。大部分は前者の方法で行うほうが上達への近道かも知れない。
 しかしながら,読影の実際では,癌を疑いながら生検で否定される症例も決して少なくない。そうであれば癌を疑ったにもかかわらず病理組織学的に否定される症例の検討も必要とされる。すなわち,生体内の胃病変の性状をX線的に読むのであるから良性,悪性,白黒が明瞭に判定できないことが生じる。X線的,内視鏡的,病理組織学的にもしかりである。それがグレイゾーンの存在である。
 要は,多くの癌・非癌症例に接し,撮る,見る,聞く,読む,学ぶことを反復して行うことが大切であると思われる。また,読影で思考する基本的な考え方および用語は対称性,均等性,規則性,連続性,限局性,びまん性,恒常性,伸展性などである。

 



大阪胃腸会(銀杏会)代表世話人 中村 信美